水質ガイド
溶存酸素は、常時測っている人がほとんどいない項目です。それでいて、一晩で鯉を失う原因としては最も多いもののひとつ。しかも最低値が出るのは、誰も池のそばにいない夜明け前です。
溶存酸素は mg/L(1リットルの水に溶けている酸素の重さ)で見ます。あわせて飽和度(%)も見ると状況がつかみやすくなります。飽和度100%とは、その水温でこれ以上は溶けないという状態のことです。
ここが誤解されやすいところで、飽和度100%は「十分」を意味しません。水温が高いほど100%の中身そのものが小さくなるからです。冷たい水はよく酸素を含み、温かい水は含めない。エアレーションをいくら足しても、この上限は超えられません。
| 水温 | 飽和溶存酸素量の目安 | 読み方 |
|---|---|---|
| 15 ℃ | 約 10.1 mg/L | 上限に余裕がある |
| 20 ℃ | 約 9.1 mg/L | 平常。落ち込んでも戻りやすい |
| 25 ℃ | 約 8.3 mg/L | 満杯でようやく快適域の上端 |
| 28 ℃ | 約 7.8 mg/L | 供給と消費が拮抗しはじめる |
| 30 ℃ | 約 7.6 mg/L | 満タンでも7 mg/L台。夜の下げ幅がそのまま効く |
| 32 ℃ | 約 7.3 mg/L | 一晩の落ち込みに耐える余力がない |
淡水・1気圧・大気と平衡した場合の概算です。30 ℃の池は、仮に飽和度100%を保てたとしても、それだけで下限すれすれのところにいることになります。
日中、水草や藻類は光合成で酸素を出します。晴れた日の夕方に測れば、飽和度が100%を超えていることさえあります。ところが日が落ちると光合成は止まり、同じ水草も藻類も、鯉も、濾過バクテリアも、一晩じゅう酸素を消費するだけの存在に変わります。
結果として溶存酸素は夕方をピークにゆるやかに下がり続け、日の出直前に最低値を打ちます。アオコが濃い池、水草が豊富な池ほど、この昼夜の振れ幅は大きくなります。緑の濃い池は「酸素が豊かな池」ではなく、「昼と夜の差が大きい池」です。
この時間帯に池にいる人はまずいません。休日の昼に測って9 mg/Lという数字を見ても、その池が夜明けに何 mg/Lまで落ちたのかについては、何も言えていないということです。
| 溶存酸素 | 状態 | 取るべき行動 |
|---|---|---|
| 8〜10 mg/L | 快適。餌食い、泳ぎ、色つやが落ちない範囲 | 現状の曝気を維持する |
| 約 7 mg/L | 錦鯉の池として確保しておきたい下限 | 昼ではなく明け方に7を割らないかを確認する |
| 6 mg/L 未満 | ストレス域。慢性化すると成長が鈍り、病気に負けやすくなる | 曝気を増やし、給餌を控えめにする |
| 4 mg/L 未満 | 急性の危険域。短時間でへい死につながる | 直ちに曝気を最大にし、給餌を止め、新水を入れる |
数字は池ごとの条件で前後します。ただ、8〜10 mg/Lを平常、7 mg/Lを譲れない線として運用しておけば、判断に迷う場面はかなり減ります。
夜間の下げ幅は毎晩同じではありません。次の条件が重なった日ほど、朝の底が深くなります。
薬品処理の最中と、雷雨のあとにも酸素は下がります。処理によっては水中の酸素を直接消費するものがあり、しかも処理中はいつもの曝気を弱めたくなる場面が出てきます。処理をするときこそ酸素を切らさないでください。夕立や雷雨のあとも、日射が途切れて光合成が止まり、雨で池がかき混ぜられて有機物の分解が進むため、翌朝の底が普段より深くなることがあります。
酸欠の典型的なサインは、水面で口をパクパクさせる鼻上げです。滝つぼ、落水口、給水口といった水が動く場所に群れて集まるのも同じ意味です。いずれも明け方に最も強く出ます。
問題は、これが「早期のサイン」ではないことです。鯉がわざわざ水面まで上がってくるのは、水中で酸素が足りなくなったあとの行動で、そこまで来たときには余力はほとんど残っていません。しかも日が昇って光合成が始まれば数値は戻り、飼い主が池に出るころには、いつもどおり泳いでいるように見えてしまいます。数日それが続き、ある朝いきなり手遅れになる。これが一晩で失う典型的な経過です。
やることは単純です。空気を送り、水面を動かし、それを夜のあいだ止めないこと。日中だけの運転では、いちばん必要な時間帯を外していることになります。
| 方式 | 効き方 | 注意点 |
|---|---|---|
| エアポンプ+散気管 | 気泡と、それが起こす水の入れ替わりで池全体を動かす | 散気管の目詰まりで風量が落ちる。夜通し運転が前提 |
| ベンチュリー | ポンプの吐出流に空気を吸わせる。追加の動力が要らない | 詰まりやすく、流量が落ちると吸わなくなる |
| 滝・落水 | 水面での気体交換が大きく、景観とも両立する | 落差と水量しだい。ポンプが止まれば同時に止まる |
| 新水の注水・換水 | 有機物の負荷そのものを下げ、酸素の消費側を細くする | 曝気の代わりにはならない。併用するもの |
気温が上がる時期には、量を増やしてください。上限が下がるうえに魚の代謝は上がるので、春と同じ設定のままでは夏を越せません。停電はこの系全体が同時に止まることを意味します。夏場の予備電源をどう考えるかは、一度決めておく価値があります。
なお、有機物の負荷を継続的に下げるという意味では換水がよく効きます。当社は錦鯉の池向けに自動換水の仕組みも個別に製作していますが、同じことをする仕組みを、私たちはこれまで他に見つけたことがありません。
夜間に消費されているのは酸素だけではありません。同時に二酸化炭素が水に溜まり、pHは下がる方向に押されます。KH(炭酸塩硬度)が薄い池では、この押しを受け止める緩衝が働かず、明け方のpHの振れが大きくなります。緩衝が尽きればpH暴落に至ります。
つまり、酸素の底とpHの底は同じ時刻に来ます。溶存酸素だけを見て安心するのではなく、KHがどのくらい残っているかも一緒に見ておくのが実際的です。詳しくはKH(炭酸塩硬度)と池の緩衝能のページを参照してください。
溶存酸素は、いま挙げてきたとおり一日のうちで大きく動く数値です。ここが、月に一度あるいは週に一度の検査で扱いにくい理由です。
連続で測るということは、その夜明け前の最低値と、それが日ごとにどちらへ動いているかが見えるようになる、ということです。7 mg/Lを割った朝があったのか、この一週間で底が0.5 mg/Lずつ下がってきているのか。昼のスポット測定では原理的に写らない情報です。
H2Koiがすること。産業用グレードのセンサーで溶存酸素を mg/L と飽和度(%)で直接測定し、連続して記録します。これは推定値ではなく、実際に測っている項目のひとつです。夜明け前の最低値と、その傾向を見える形で残します。KHについては0〜20 dKHの算出値として表示します(滴定による測定ではありません)。GHは扱いません。
H2Koiがしないこと。病気や寄生虫の判定はしません。何かを防ぐ装置でもありません。連続測定はあくまで早めに気づくためのもので、判断と処置は飼い主の側にあります。
まず酸欠を疑ってください。特に明け方に強く、日が昇ると収まるなら、その可能性が高くなります。ただしエラ病や寄生虫でも同じ行動が出ますし、水質の悪化(アンモニアや亜硝酸)でも起こります。まず曝気を増やして酸素側の可能性をつぶし、それでも収まらなければ他の原因を見ていくのが順序です。
夜こそ回してください。酸素が最も低くなるのは日の出前で、日中の運転はその時間帯を外しています。音や電気代を理由に夜だけ止めるのは、いちばん危ない数時間を無防備にすることと同じです。
28 ℃を超えたあたりから、飽和していても8 mg/Lに届かなくなります。30 ℃なら上限が約7.6 mg/L。ここから一晩ぶんの消費が引かれるので、条件が重なれば6 mg/L割れは十分に起こり得ます。高水温期は曝気を増やし、給餌を控えめにするのが基本です。
一台あると判断が変わります。実用に足るDO計は安いものではなく、消耗品の交換と校正も要りますが、感覚で語られがちな項目を数字にできる意味は大きいです。ただし手持ちの計器で分かるのは「測ったその瞬間」の値です。明け方の最低値まで知りたい場合は、連続で見る仕組みが必要になります。
昼はそのとおりです。夜は逆で、水草も藻類も酸素を消費する側に回ります。緑の濃い池は昼夜の振れ幅が大きい池であり、朝の底はむしろ深くなりがちです。アオコが急に崩れたときは、分解に酸素が使われてさらに落ちます。
処理の種類によっては起こります。薬剤そのものが水中の酸素を消費するものがあり、加えて処理中は曝気を弱めたくなる状況が生じます。処理をしている最中こそ酸素を切らさず、鯉の様子を見て鼻上げが出たら中断してください。
雷雨の前後は日射が途切れて光合成が止まり、雨で池がかき混ぜられて底の有機物の分解が進みます。結果として溶存酸素が下がることがあります。荒れた天気のあとの一晩は、曝気を強めておくと安心です。
H2Koiは産業用グレードのセンサーで溶存酸素を mg/L と飽和度で直接測り、夜明け前の最低値を含めて連続で記録します。誰も池のそばにいない時間帯にも、気づくための材料を残しておくための仕組みです。
H2Koiについて