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水質管理ガイド

池の水質を電子的に測る — 試薬・デジタル計・連続監視の実際

試薬や試験紙での水質検査から一歩進めて、「機械で数値を出したい」と考える方は多いと思います。ただし、デジタルなら何でも測れる、とは限りません。ここでは池で使われる五つの測り方を、測れるもの・測れないもの・手間・校正の順に、できるだけ正直に並べます。錦鯉の池を前提にした内容です。

要点

「電子的に測る」で出てくる五つの方法

池の水質を数値にする道具は、大きく五つに分かれます。値段や見た目ではなく、「何を、どのくらいの頻度で、どれだけ手をかけて測れるか」で整理するのが実用的です。

方法主に分かること手間校正・消耗品夜間の変化
試薬(滴定・パックテスト)pH、KH、アンモニア、亜硝酸、硝酸ほか1回ごとに人が測る試薬の購入と使用期限見えない
試験紙複数項目をおおまかに数十秒試験紙の買い足し、開封後の劣化見えない
ペン型・ハンディ計pH/電気伝導率・TDS/溶存酸素など一〜二項目その場で数値標準液での校正、電極の交換見えない
吸光光度計(デジタルパックテスト等)試薬に対応した多数の項目発色させてから測定試薬が継続的に必要見えない
連続センサー(ゾンデ)複数項目を常時、時系列で設置後は自動定期校正、センサーの寿命見える

試薬(滴定・パックテスト) — KHを手で読める唯一の方法

もっとも古くから使われてきた方法です。パックテストは水を吸い込んで発色を標準色と比べるだけ、滴定式は中和するまでの滴数を数えるだけで、電池も校正も要りません。とくにKH(炭酸塩硬度)を手作業で読むなら、今でも滴定が実質的に唯一の手段です。KHはpHの緩衝力そのものなので、鯉池ではpHより先に見るべき数値だと考えています。

弱点は一つだけ、しかし大きな弱点です。試薬が示すのは「試験管に水を汲んだその瞬間」の値でしかありません。汲む時刻を変えれば、同じ池でも違う数字が出ます。

試験紙 — 速い。ただし危険な低濃度域がいちばん読めない

複数項目が数十秒で分かる手軽さは本物で、日常の「大きく外れていないか」の確認には十分役に立ちます。問題は精度の分布です。試験紙は高い濃度ほど色の差が出やすく、低い濃度ほど色が似通います。ところがアンモニアや亜硝酸は、まさにその低い濃度から鯉に効きはじめます。

試験紙でアンモニアや亜硝酸が「ほぼゼロ」に見えても、実際には鰓に影響が出る濃度が残っていることがあります。濾過が立ち上がっていない池、薬浴中の池、投薬や大量換水の直後は、試験紙の判定だけで安心しないでください。判断に迷う色は、悪いほうの数値として扱うのが安全です。

ハンディ・デジタル計 — 「デジタルなのに測れない」項目のほうが多い

pHペン、TDS/EC計、溶存酸素計。いずれもその場で数字が出るのは大きな利点で、スポット測定の道具としてはよくできています。ただし多くの機種は一項目、多くても二項目しか測りません。「デジタル水質計」を一本買えば池の管理が済む、という期待だけは持たないほうがよいと思います。

とくに誤解が多いのがTDSメーターです。TDSメーターは実際には電気伝導率を測り、係数を掛けてTDSに換算しています。したがって「イオンの総量が変わったか」は分かりますが、アンモニアなのか硝酸なのか塩なのかは区別できません。TDSが安定していても硝酸が上がっていることは普通に起こります。安全性の指標として読むべき数値ではありません。

項目試薬試験紙ペン型デジタル計吸光光度計連続センサー
水温×××
pH
KH(炭酸塩硬度)×演算
アンモニア(NH4/NH3)×機種による
亜硝酸×演算
硝酸×
溶存酸素×
電気伝導率・TDS×××
濁度×××
ORP(酸化還元電位)×××○(オプション)

表のとおり、KHとアンモニア系はペン型デジタル計の守備範囲の外にあります。ここが埋まらない限り、機械を何本増やしても池の安全は評価できません。

吸光光度計 — 項目は増えるが、手作業と試薬は残る

試薬で発色させた水を機械で読む方式です。色を目で比べる工程が数値化されるので、判定の個人差が消え、記録も残しやすくなります。アンモニア、亜硝酸、硝酸まで一貫した精度で追えるのは大きな利点です。

一方で、これは「試薬をやめる装置」ではありません。試薬は今までどおり必要で、発色を待ち、カップに移し、洗う工程も残ります。そして測定はやはり、人が池に行ったその瞬間の値です。精度は上がりますが、時間の穴は埋まりません。

連続センサー(ゾンデ) — 夜間の最小値が見える唯一の方法

池に入れっぱなしにして、一定間隔で測り続ける機器です。ここまでの四つと決定的に違うのは、値そのものではなく「時系列が残る」点にあります。

鯉の池で本当に危ないのは、瞬間の絶対値よりも変化の幅と、その最小値です。溶存酸素(mg/L。ppmとほぼ同じ意味で使われます)は、日中に水草や藻類が酸素を出し、夜間は生体も植物も酸素を消費するため、明け方に最小になります。水温が上がるほど溶け込める酸素量そのものが減るので、夏の夜明け前は年間でもっとも条件が悪い時間帯になります。pHも同じ理由で日中に上がり、夜間に下がります。

昼に測って問題のなかった池でも、明け方の溶存酸素とpHは別の数字になっています。夏場に「昼は普通なのに、朝になると鯉が水面で口を使っている」場合、原因は昼の数値ではなく、見ていない夜間の落ち込みにある可能性があります。エアレーションを止める運用、藻類が濃い池、給餌量を上げた直後はとくに注意してください。KHが低い池では、この夜間の下降がpH暴落につながることがあります。

校正とセンサーの手入れ — 連続測定を選ぶときに見るところ

連続測定の質は、結局のところセンサーそのもので決まります。H2Koiは項目ごとに最適な産業用グレードのセンサーを選び、正しく校正した状態で池に据えています。センサー面はセルフクリーニングのワイパーで清浄に保たれ、生物膜や藻類は計測に影響する前に取り除かれます。

人の手が必要なのは、電極式センサーの年に一度の校正だけです。ガイドに沿ったワンステップで、ご自身なら数分、サービス訪問時に私たちが行うこともできます。

連続測定の導入前に、確認しておくとよい四点です。

この四点に明確に答えられる連続測定を選んでください。H2Koiの答えは、上に書いたとおりです。

週1回の検査では、残りの167時間を誰も見ていない

これが、試薬とデジタル計をどれだけ揃えても埋まらない唯一の穴です。週に1回きちんと測っている方は、飼育者としては十分に丁寧です。それでも、1週間168時間のうち観測されているのは1時間分にも満たず、残る167時間は記録がありません。

測定の頻度1週間の観測回数記録のない時間
1回/週1回約167時間
1回/日7回約161時間
連続常時0時間

そして鯉を失う出来事の多くは、人が池を見ていない時間に進みます。ポンプの停止、濾過の目詰まり、投薬後の酸素消費、夏の夜間の酸素低下、KHを使い切った池のpH下降。いずれも翌朝には結果だけが残り、原因になった数時間は記録に残りません。連続測定が変えるのは、この「気づく時刻」です。

H2Koiが実際にしていること、していないこと

産業用グレードのセンサーで直接測定している項目は、水温、pH、溶存酸素(mg/Lと飽和度%)、電気伝導率、濁度、アンモニウム(NH4)、硝酸(NO3)です。

オプションで追加できる項目が二つあります。ORP(酸化還元電位)と、藍藻(フィコシアニン蛍光)のチャンネルです。フィコシアニンは藍藻に固有の色素なので、緑藻や巻き上がった泥ではなく藍藻性のブルームが立ち上がりつつあることの早期警告になります。これは試薬でも試験紙でもペン型計でもまったく読めない項目で、上で比べたどの方法でも代わりになりません。ただし、細胞数の計測ではなく、毒素の測定でもありません。

測定値から演算している項目は、KH(0〜20 dKH)、NH3(遊離アンモニア)、亜硝酸、塩分、TDSです。KHは滴定ではなく演算値です。GHは測定も報告もしていません。

していないことも書いておきます。H2Koiは連続的な早期警告であり、病気や寄生虫を検出することはできません。何かの発生を防ぐ装置でもなく、変化に早く気づくためのものです。

あわせて、池ごとの自動換水装置も製作しています。同等のことができる装置を、私たちも、お客様も、他に見つけたことがありません。

実際の組み合わせ方

五つの方法は競合しません。役割が違うだけです。実際の池では、次の組み合わせに落ち着くことが多いと思います。

  1. 土台になるのは連続測定です。夜間の最小値と変化の速さは、ここでしか見えません。
  2. 日常の確認として、試験紙またはペン型デジタル計。その場で一点を読むぶんには役に立ちます。

よくある質問

池の水質はデジタル測定器だけで管理できますか

機器によります。市販のペン型デジタル計はpH、電気伝導率・TDS、溶存酸素あたりが中心で、KH、アンモニア、亜硝酸、硝酸は測れない機種が大半です。この四項目こそ鯉の安全に直結するため、ペン型計だけで管理しようとすると穴が残ります。連続センサーはこの範囲が違い、H2Koiはアンモニウムと硝酸を実測し、KHと亜硝酸を演算して示します。

試験紙とパックテスト(試薬)はどちらが正確ですか

試薬です。試験紙は速さが利点ですが、低濃度域で色の差が出にくく、アンモニアや亜硝酸のように低い濃度から効いてくる項目では判定を誤りやすくなります。ただしどちらも読めるのは人が池に立ったその一瞬で、連続計測はその一瞬を24時間に置き換えます。

TDSメーターの数値が安定していれば水質は安全ですか

安全の根拠にはなりません。TDSメーターは電気伝導率を換算しているだけで、内訳を区別しません。TDSが変わらないまま硝酸が上がることも、アンモニアが出ていることもあります。傾向を見る指標としては有用ですが、安全性の判定には使えません。

pH計はどのくらいの頻度で校正すればよいですか

機種と使用条件で変わるため、まずは取扱説明書の指定に従ってください。ペン型の安価な電極は使い込むほど指示値が動きやすく、校正を飛ばさないことが前提の道具です。反応が鈍くなった、標準液で校正が通らなくなった、という状態は電極の寿命のサインです。

KH(炭酸塩硬度)はデジタルで測れますか

直接測るセンサーは一般的ではありません。H2Koiを含め、連続測定でKHとして表示される値は測定値からの演算です(H2Koiでは0〜20 dKH、滴定ではありません)。H2Koiの場合、その演算のもとになるのは産業用グレードのセンサーが読んだ実測値で、KHが減りはじめた段階から24時間、動きを追い続けます。

溶存酸素は昼に測れば十分ですか

十分ではありません。溶存酸素は日中に高く、夜間に消費されて明け方に最小となります。昼の一点だけを測ると、いちばん厳しい時間帯を丸ごと見落とします。手測りで補うなら、夜明け前と日中の二点を比べてください。

池に入れっぱなしのセンサーは汚れませんか

生物膜や藻類の付着は、放置すれば連続測定の最大の敵になります。だからこそH2Koiではセルフクリーニングのワイパーが決められた間隔でセンサー面を拭き、汚れが計測に影響する前に取り除きます。人の手が必要なのは年に一度の校正だけです。汚れ対策と校正の説明がない連続測定は、慎重に見たほうがよいと思います。

夜間の水質も、記録として残す

H2Koiは、池の水質を連続して測り、変化が起きた時点でお知らせするための仕組みです。手測りでは埋められない時間を、産業用グレードのセンサーで埋めるためのものだとお考えください。

H2Koiについて