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水質ガイド

池の水が緑になる — グリーンウォーター、藻、そして透明度

池の相談でいちばん多いのが「水が緑色で鯉が見えない」という話です。答えとしてまず殺菌灯の名前が挙がりますが、それは半分しか当たっていません。水そのものが緑に濁る現象と、壁や底にへばりつく糸状の藻は、原因が似ていても対処がまったく違います。そして錦鯉にとって本当の問題は、緑という色ではなく、藻類が水に持ち込む一日の振れ幅のほうにあります。

要点

緑の水と糸状の藻は、別の問題です

まず見た目で切り分けます。ここを混ぜたまま対策すると、効かない道具に費用と時間をかけることになります。

ひとつめは浮遊性の藻、つまり水中を漂う単細胞の植物プランクトンです。水そのものが抹茶を溶いたように濁り、手を入れても何もつかめません。日本の鯉飼育では「青水」、一般には「グリーンウォーター」と呼ばれます。

ふたつめがアオミドロなどの糸状藻です。壁面、底、石、流れ込み、ろ材の表面に固着し、綿や糸のように伸びます。棒に巻き取れば手応えがあります。英語圏でいうブランケットウィードがこれにあたります。

なお「アオコ」という語は、厳密には藍藻(シアノバクテリア)が水面に粉や膜のように浮く状態を指します。緑藻や珪藻による青水とは別のもので、こちらは日本語でも混同されがちです。水面に絵の具を流したような筋ができ、独特のにおいがあるなら藍藻を疑ってください。

種類見え方紫外線殺菌灯主な対処
浮遊性藻類(青水・グリーンウォーター)水全体が緑に濁る。すくえないよく効く栄養を絞る、遮光、殺菌灯、水換え
糸状藻(アオミドロ)壁や底に付着し、糸状・綿状に伸びるほぼ効かない物理的に絡め取る、栄養を絞る、遮光
藍藻性のアオコ水面に粉状・膜状に浮く。においを伴う限定的すくい取る、循環を見直す、栄養を絞る

殺菌灯がアオミドロに効かない理由は単純です。紫外線が当たるのは、配管を通ってランプの筒を抜ける水だけだからです。アオミドロは壁に固着していて、そもそも殺菌灯の中を一度も通りません。効かないのは製品の問題ではなく、そういう仕組みだということです。

なぜ発生するのか

藻に必要なものは三つ、栄養と光と時間です。池でこの三つが揃う条件は、だいたい決まっています。

古典的なのは二つの場面です。ひとつは新設の池で、ろ材にまだバクテリアが乗っていない時期。もうひとつは春先です。水温が上がり日射は強くなるのに、睡蓮などの水生植物はまだ動き出しておらず、栄養を奪い合う相手がいません。毎年三月から五月にかけて緑になる池は、たいていこの構図です。

鯉にとって危険なのは「緑」ではなく「振れ幅」

ここがこのページの本題です。

藻類は日中、光合成をします。二酸化炭素を消費するので水中の溶存酸素は上がり、同時にpHも上がります。夜になれば光合成は止まり、藻類自身が呼吸します。酸素は消費され、二酸化炭素が戻り、pHは下がります。つまり濃いブルームの池は、一日のうちに酸素とpHを大きく上下させる装置を抱えていることになります。

下がり切る時刻は、夜明け直前です。夜通し酸素が消費され続けたあと、光がまだ届かない時間帯。飼い主がいちばん見ていない時刻に、池はその日の底を打ちます。

時間帯藻類の働き溶存酸素pH
日中(10〜16時)光合成が盛ん上昇、過飽和になることも上昇
夕方(17〜19時)光合成が弱まる頭打ち頭打ち
深夜(0〜3時)呼吸のみ低下が続く低下が続く
夜明け前(4〜6時)呼吸のみ一日の最低一日の最低

ブルームが濃ければ、pHが一日で1.0以上振れることも珍しくありません。ここで効いてくるのが炭酸塩硬度(KH)です。KHは水がpHの変化に抵抗する力そのもので、これが十分にあれば夜間の下降は途中で止まります。逆にKHが乏しい池では、下がる力に対して踏みとどまるものがありません。濃いブルームと低いKHの組み合わせは、そのまま一晩のpH暴落の条件です。

項目目安測るときの注意
溶存酸素概ね6 mg/L以上昼ではなく夜明け前の値が本当の値
pHの一日の振れ幅1.0を超えるなら過剰昼と夜明け前の両方を測って差を見る
炭酸塩硬度(KH)概ね105〜180 mg/L(6〜10 dKH)雨と水換えで動く。定期的に確認する。ブルームが濃い池ほど下限側は危険

いずれも一般的な目安です。池ごとに水源も収容量も違いますから、必ずご自身の池で実測して確かめてください。

朝の鼻上げは、すでに山を越えたあとの姿かもしれません

朝いちばんに鯉が水面で鼻上げしているのを見つけたなら、その時点で酸素は回復に向かい始めています。つまりあなたが見ているのは最悪の瞬間ではありません。最悪の瞬間はその一時間前にあり、誰も見ていません。溶存酸素とpHが同時に底を打つ夜明け前は、体力の落ちた個体や大型の鯉から順に影響が出る時間帯です。緑の池で「昼に測ったら問題なかった」は、安全の根拠になりません。

青水を残すか、澄ませるか

日本の鯉飼育には、新水と青水を使い分けるという考え方があります。これは欧米の「とにかく澄ませる」という発想とは少し違い、緑の水を一律の敵とはみなしません。

薄い青水には利点があります。越冬期の水は落ち着き、鯉は隠れる場所を得て神経質になりにくい。稚魚には動物プランクトンという餌が伴います。一方で新水、つまり澄んだ水は、鑑賞のためだけでなく、体表の傷や穴あき、寄生の兆候を早く見つけるためにも重要です。青水の下では鯉の体が見えず、異常の発見が遅れます。

大事なのは、薄い青水と濃いブルームはまったく別物だということです。底が透けて見える程度の青水と、腕を入れると肘から先が消える池とでは、日周変動の大きさが桁違いになります。青水で管理するという選択は、その振れ幅を自分で引き受けるという選択でもあります。濃くなりすぎたら、水換えで薄める判断を先送りにしないでください。

対策の優先順位

効く順に並べます。上のほうほど地味で、下のほうほど道具の話になります。逆順に手を出す方が多いのですが、それでは同じ問題が翌年も出ます。

手段効く相手効き方注意点
給餌量と収容尾数を落とす両方根本的効果が出るまで数週間かかる
遮光(すだれ、よしず、遮光ネット、睡蓮の葉)両方中〜大水温上昇の抑制にもなる
水生植物を入れて栄養を奪い合わせる両方鯉が食べる、掘り返す。保護が要る
ろ過を健全に保ち、熟成させる両方(間接的)洗いすぎない。ろ材を一度に全交換しない
水換えによる希釈両方(間接的)水源の水質と温度差を確認する
紫外線殺菌灯浮遊性のみ水量に見合った能力が必要。ランプは概ね1年で交換
物理的除去(巻き取り、ブラシ)糸状藻のみ手間がかかり、栄養が残る限り再生する
麦わら(大麦ストロー)主に糸状藻弱い、または不確か下記のとおり根拠は弱い

麦わらについては正直に書きます。欧米の池では古くから用いられてきた方法ですが、効果を支持する証拠は弱く、効いた池と効かなかった池の差が説明できていません。試すのは自由ですが、給餌量の見直しの代わりにはなりませんし、分解の過程で酸素を消費することも忘れないでください。

殺菌灯を選ぶときは、池の水量に対する処理能力を必ず確認してください。能力が足りなければいつまでも澄みません。またランプの紫外線出力は点灯時間とともに落ちるため、点いていることと効いていることは別です。

一気に澄ませてはいけない

濃いブルームを一晩で殺すと、酸素が落ちます

濃い青水の池に、いきなり能力の高い殺菌灯を入れたり、藻類を一度に死滅させる処置を行ったりすると、大量の藻体が同時に死にます。その分解は酸素を激しく消費し、同時にアンモニアを放出します。緑が取れて透明になった翌朝に鯉が鼻上げする、という事故はこれです。曝気を先に増やし、日を分けて段階的に薄めてください。透明度は数日遅れて構いません。

H2Koiがこの話題について見えるもの、見えないもの

できること

H2Koiが産業用グレードのセンサーで直接測定するのは、水温、pH、溶存酸素(mg/Lと飽和度%)、導電率、濁度、アンモニウムイオン(NH4)、硝酸(NO3)です。ORPはオプションで追加できます。同じくオプションで、藍藻のフィコシアニン蛍光を読むチャンネルも選べます。フィコシアニンは藍藻に固有の色素なので、緑藻や巻き上がった泥ではなく藍藻性のブルームが増えつつあることを切り分けられます。ただしこのチャンネルは、細胞数の計測でも、毒素の測定でもありません。そこから計算で求めるのが、KH(0〜20 dKH)、NH3、亜硝酸、塩分、TDSです。センサー面は自動清掃ワイパーが藻の付着を抑えます。光学式のセンサーは藻膜が張れば濁度も溶存酸素も正しく読めなくなるため、ブルームの出ている池では、この機構がそのまま精度を支えます。

この話題との関係でいえば、濁度を直接測るためブルームの濃さの推移が数字として残ります。そして溶存酸素とpHを連続して記録するので、昼の値ではなく、夜明け前の底の値が見えます。緑の水の危険は振れ幅にあるので、記録されるのはまさにその振れ幅です。

できないこと

藻の種類の同定はできません。リン酸は測っていません。GHは表示しません。病気や寄生虫の検出もできません。H2Koiは産業用グレードのセンサーによる継続的な早期警告です。何かの発生を防ぐ装置ではなく、変化に早く気づくための装置です。

あわせて、私たちは池ごとに設計した自動水換えも手がけています。同じことをする他のシステムを、私たちも、お客様も、まだ見つけたことがありません。

週に一度の検査では、この問題は捕まえられません

試薬キットは正確ですが、測るのは測った瞬間の値だけです。そして人が池のそばに立つのは、たいてい日中の都合のいい時間です。

その時刻は、緑の池にとって一日でいちばん条件の良い時間帯にあたります。光合成で酸素は上がり切り、pHも高い側にあります。数字はきれいに出ます。そして夜明け前の底の値は、測られないまま過ぎていきます。

週に一度、五分の測定は、一週間168時間のうちの五分です。一定の値の池ならそれで足りますが、日周変動を抱えた池では、点で測ることと線で見ることの差がそのまま安全性の差になります。緑の水の池において「測った値は良かった」は、「一日中良かった」を意味しません。

よくある質問

池の水が緑色になるのはなぜですか

水中を漂う単細胞の藻が増えているためです。餌や糞に由来する硝酸塩・リン酸塩という栄養、強い日射、そしてろ過の未熟さや能力不足が重なると発生します。新設の池と、水生植物がまだ動いていない春先が代表的な場面です。

殺菌灯を付けたのにアオミドロが消えません

紫外線が当たるのは配管を通る水だけで、壁や底に固着したアオミドロは殺菌灯の中を通らないためです。糸状藻には物理的な除去と、栄養と光を絞ることでしか対応できません。殺菌灯が効かないのは故障ではなく、そもそも対象が違うということです。

グリーンウォーターは鯉に害がありますか

緑そのものが直接の毒になることは、ふつうはありません。問題は藻類が生む一日の変動です。昼は光合成で酸素とpHが上がり、夜は呼吸で両方が下がります。濃いブルームではpHが一日に1.0以上振れることもあり、炭酸塩硬度が低い池ではそれが明け方のpH暴落につながります。

青水のままでも大丈夫ですか

底が透けて見える程度の薄い青水は、越冬期や稚魚の飼育で積極的に使われてきました。ただし濃いブルームは別物です。また青水では鯉の体表が見えないため、傷や穴あき、寄生の兆候を見落としやすくなります。残すなら濃度を管理し、変動を自分で引き受けるという前提で選んでください。

水換えをすれば緑は取れますか

水換えは栄養を薄めるので有効ですが、それだけで澄ませようとすると大量の換水が必要になります。給餌量と収容尾数の見直し、遮光、ろ過の健全化と組み合わせてください。水換えは対策の一部であって、単独の解決策ではありません。

麦わらを入れると効きますか

欧米の池では古くから使われてきた方法ですが、効果を支持する証拠は弱いのが実情です。効く池と効かない池の差も説明できていません。試すこと自体は構いませんが、給餌量の見直しの代わりにはならず、分解の過程で酸素を消費する点にも注意してください。

水が澄んだ翌朝に鯉が鼻上げしています

死んだ藻の分解が酸素を消費し、同時にアンモニアが出ている可能性があります。まず曝気を最大にし、給餌を止めて、アンモニアと亜硝酸を確認してください。以後は一気に澄ませようとせず、日を分けて段階的に薄めるようにしてください。

昼の数字ではなく、夜明け前の底を見る

緑の水そのものより、その水が一日のうちに何を起こしているかのほうが重要です。H2Koiは産業用グレードのセンサーで濁度、溶存酸素、pHを連続して記録し、誰も見ていない時間帯の変化を残します。判断はあくまで飼い主の方のものですが、その材料は欠かさずお手元に届きます。

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